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ついに通訳がドラマに!「東京サラダボウル」

  • 執筆者の写真: MIDORi
    MIDORi
  • 2月3日
  • 読了時間: 3分

これまで、いろんな職業がドラマの題材になってきたけど、「通訳」が主役になることはないだろうなと思っていた。外国語の壁があるし、黒子に徹する地味な役割だから。

ところが、意外にも「通訳」がフィーチャーされるドラマが登場した!

現在NHKで放映中の『東京サラダボウル』。 予告編で見た主人公のミドリ色の髪に何となく惹かれて観はじめたら、馴染みのあるシーンが満載でびっくり。

俳優・奈緒さんが演じる主人公・鴻田麻里は、東新宿警察署国際捜査係の警察官。松田龍平さんが扮する中国語の警察通訳人とコンビを組んで、外国人が関わる事件を次々と解決していく。原作は漫画「東京サラダボウルー国際捜査事件簿ー」


わたしも2000年初頭から神奈川県警の民間通訳人をしていた。ドラマの通訳人は常勤だが、民間通訳人は登録制で、要請があれば出動する。 2018年に音楽活動に専念するため登録を解除し、今はもう現場に行くことはないけど、神奈川県下のありとあらゆる警察署に行ったことがあるのはささやかな自慢。

ドラマに出てくる通訳センターの常勤通訳人さんと民間通訳人の立場の違いはあれど通訳する状況は同じなので、懐かしく感じる場面がたくさんあった。

例えば、 取り調べ室での通訳人の位置(机の横、足がおさまらない...)や、外国語に訳しやすい日本語で話してくれる通訳思いの取調官がいる一方で、ドラマで四字熟語を使っていたように悪気なく訳しにくい日本語をしゃべる通訳泣かせの取調官がいたり、時には被疑者と取調官と3人で和やかに会話したり。

こうした「あるある」な場面続出に一人で爆笑しつつ、ドラマの完成度の高さに感心した。

通訳人は中立な立場で警察にも被疑者にも加担してはならないし感情移入してはいけない。 しかしただ機械的に言葉を訳せばいいという仕事でもない。言葉は生きものなので状況や時代によって使われ方が変わることもある。 複数の意味に訳せる場合は特に注意が必要で、訳し方によっては被疑者の人生を台無しにする危険性もある。ドラマでは誤訳の例を取り上げていた。通訳は常に重責を感じながら正確性を期すために最大限話者に心を向ける。 「シンハラ語」という希少言語の通訳人役のイモトアヤコさんのセリフで「通訳には耐久力と推察力が備わっている」といったようなことを言っていた。確かに重圧の現場を重ねることで通訳は無意識にそういった特性を身に着けていくのかもしれない。 わたしは通訳の仕事を通して言葉の重みを自分の目と耳で確認してきた。だからこそ、差別的侮蔑的な言葉が使われ続けている状況を見て見ぬふりはできない。言葉の本質に向き合おうとしない人には日本語から日本語でいいので取調室で通訳人を体験させてみたい。そうすればいかに自分の感覚が麻痺していたか如実に知ることになるだろう。 歌うときも常に言葉を大事にしてきた。意味のわからないフランス語やドイツ語の曲は歌えないし、自分の考えに沿わない歌はいくらメロディーが素敵でも歌わない。 イパネマの娘を封印したことは以前の記事にも書いた通り。 歌詞を伝える代弁者としての表現者でありたい。

今回は通訳の話題を中心に書いたけど、ミドリ髪の主人公役にも共感するところが満載。

というわけで、東京サラダボウルネタはつづく...



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